プログラムを考えようと思ったのは、週に二、三時間程度の稽古をする人が大半なのに「習うより慣れろ」をやっていたんじゃダメだ。「合気道を始める人の動機は、千差万別。体だって、千差万別。稽古できる時間や目的、ライフスタイルだって、ぜんぜんちがう。だからそれぞれに意味のある稽古方法や伝え方を考えよう。少ない人数なら、それも可能なはず」と考えたのは、前に書いた通り。
それを普段の稽古で試行錯誤してたんですけど、指導するのは昇級審査前の人たちが中心だから、まず形がどうかということをやらなきゃいけない。体験の人は、これがまた体の個性が千差万別なので、経験値がつかえず、かなり難しい。
あるとき白帯のおじさんたち3人に、昇級審査の審査技を指導していていて「ここのところは臂力の養成と同じだから、まず臂力の養成をやりましょう」ということにした。臂力の養成というのは、技以前の稽古方法「基本動作」のひとつで、養神館ではこれを単独・相対・剣操法でやることで、技の中に出てくる動きや理合いなどを身につける。
まず臂力の養成を相対(受けに両手で掴まれた状態)でやってもらった。臂力の養成の中には、ぶつからないで重心移動で崩すこと、ぶつからずに丸くしたから持ち上げてしまうことなどが含まれている。そこを進み方、足裏からの力の流れ、指先のあり方、手首の動かし方、肘の向き、脇のしめ方など、具体的に細かく説明して稽古してから、技の稽古に入っていった。
稽古が終わってから、その中のひとりがわざわざ「ああいう風に説明してもらって、よく理解できた」と言いに来てくれた。ちょっと手応えはあった。
足の指先がどうなっているか、膝は、腰は、肘はどっちを向いているか、首はどうなっているかなど、体の地図が出来ていない人には、そういう部分を。そうすれば崩し方に入っていける。崩し方には、当て身や間合い、骨格的な弱点や錯覚させる方法や反射の起こさせ方みたいなことも入ってくる。
伝えるのに手間がかかるし、伝え方を考えるのも手間がかかるけど、やっぱりこういう方向で試行錯誤していけばやれそうだ。問題はそれを稽古の時間の中で、どれぐらいの割合に割合にするか。それにこと細かなことを言ったら混乱する人もいるだろうから、イメージで伝えた方がいい場合もあるよね。
ただ武術的な動きをイメージで伝えるのって、たいがい難解かも。流派や団体によっては宗教的だったり、使うイメージそのものになじみがない。また、たとえば甲野善紀先生の説明は、かなりかなり詳しい人向けで、普通の人には呪文のようかもしれない(笑)
だけど、それはもう9月からの精晟会渋谷の稽古が始まってからのトライ&エラーするしかないかな。来てくれる人によって違うだろうし。