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テレビ局から護身術のオファーがありましたがお断りしました


超メジャーなバラエティ番組のプロデューサーから、コンタクトがありました。

プロデューサーから直接連絡があったことにビックリ。通常は、下請けの制作会社の担当者からだと思います。


この方はけっこう渋谷合気道会のYouTube動画を見ていただいた上でのオファーのようです。

うちでは、審査が終わったタイミングで、技の稽古から離れた設定で、護身術の稽古を行なっています。合気道の技は現実にあるような設定ではなく、あくまで合気道の技の習得を目的としたものです。だから技の応用として、たまには現実にありそうな設定で、稽古をしておいた方がいいと考えています。

以前にも書いていますので、ご興味があれば、こちらをどうぞ。



それら護身術の稽古をまとめて、何本かの動画をYouTubeに上げています。






オファーをお断りした理由


お断りしたのは、ごく単純な理由です。たぶんこの日になる確率が高いけれどもとありましたが、4日間キープの設定だったのです。


テレビ関係でそういう場合、実際の撮影は1日でも、日程を4日間押さえられてしまうということです。大物MCか、それとも他のタレントのスケジュールかは分かりませんが、とにかく不確定だということです。「受けます」となると、直前まで4日間を空けておく必要があります。


この日でと決め打ちなら、受けさせていただくことを検討したと思いますが、4日間となると考えるまでもありません。こちらの負担が大きすぎます。即お断りしました。



以前、女性誌ar(アール)の見開き2ヶ月分の企画で、乃木坂46の堀未央奈さんに合気道を教えさせていただいたときは、編集者がかなり動いてくれました。

稽古の場での事前の打ち合わせが1時間ぐらい。当日は実質2時間で前準備が1時間ぐらいだったと思います。堀さんの到着は時間通りで、時間的なロスはありませんでした。


ところがテレビとなると、その数倍は時間を取られると覚悟しておく必要があります。それプラス3日間です。


首を絞められたらどう対処するか


テレビ局からオファーを断ったことを中目黒の稽古でもらすと、皆さんから「どうして断るんですか!?」みたいな反応が返ってきました。「地上波の影響は絶大ですよ」とか「出たら、ここがとんでもないことになるのに」みたいなことを口々に、です。


いやいや、ここに入会者が殺到しても入れない。いまだって、人数制限してるのにキャパオーバーになるだけじゃない。

広報的なことは絶対必要だけど、箱に見合った活動じゃないとね。

うちはセミナーやって儲けようとか、YouTubeの再生回数増やして広告収入稼ごうとかしてるわけじゃないし。どんどん拡大しよう、でもない。教えて、ちゃんと伝わる規模を守りながらやっていきたい。冷静に考えてよ、みたいな話をしました。



だいたい私にオファーする狙いを考えたら、それほどメリットないと思うけどなぁというのが正直なところ。




番組の狙いはどこにある?


世の中に「護身術」を標榜する教室は、数多くあります。それらのほとんどは、軍隊格闘術的なガチな路上のファイトです。

うちでは、そんなガチなことをやっているわけではありません。というか格闘で圧倒したいなら、技術より何より、まずは体重を増やしてフィジカルを鍛えまくることが必要になるでしょう。



何度か書いていますが、自分の尊厳や命の危険があるなら、出来ることはなんでもやって脱出するのが当然だと思います。その前提は、うちでは「自分の方が身体が大きいとかパワーがあると思うから、襲ってくる」のだと考えます。


だからなんでもやるといっても、力の対抗をするわけではありません。力で対抗してどうにかなるのなら、護身としてはそれでもいいのですが、体格差が大きけばそれも難しい。

下の動画では、筋力で蹴るのではなく、体重を使って身体を離すために蹴るというのをやってみたのですが、女性対男性でやった場合、体重差で跳ね返されるということが分かりました。何だってやってみないと、効果があるのかどうかすら分かりません。自分で把握しておくことは、とても大事だと思います。





そしていくつもの段階があると思いますが、現実にもっとも多いのは、近しい関係の人から受ける飲みの場でのパワハラやセクハラに近い行為だと思います。会社や学校関係のそのつながりや上下関係を持ち込まれるからやっかいです。

できれば、相手に「やられた感」を持たせずに、つまり今後の人間関係をややこしくしないで脱出できるのが一番でしょう。動画を見ていただければ分かると思いますが、そこを護身術のスタートにしています。


今後の人間関係をややこしくしないで脱出できる方法を稽古している道場は、ほとんどないはずです。やっつけていないのに、するっと脱出できる方法。たぶん番組プロデューサーの狙いは、そこなんだと思います。

なぜって殴る蹴る関節を極める、みたいな対応なら、世の中にいくらでもあります。それを私に連絡して来られるということは、ちがう対処を求めているのだと推測できます。たぶん、ガチ対応は求めていないんでしょう。




でも、ですよ。オファーの内容だと、たぶん出演者たちに私が護身術を教えるのです。

誰かうちの会員を連れて行って、やってみせて、「はい、やってみてください」ではないと思います。

たとえば私が出演者に羽交い締めにされて、そこから脱出してみせてから、やり方を説明するのだと思います。


だけど技の稽古じゃなく、護身としては相手に完全に掴まれてしまうのは、下策も下策。はるかに体格で勝る相手に胴を絞められたら、それだけで終わるかもしれません。柔道のように、襟と袖を持たれたら、それだけで動けなくなるかもしれません。


そうなるのは知らないおっさんに襲われた、みたいな設定。

知らないおっさんに襲われたら、まず当身。殴る蹴るになります。暴れて完全に掴まれないようにします。


テレビって、事前の狙いはどうあれ、絵面として面白いかどうか、になりがちです。


うちの会員にやるなら、避けるかブロックされる前提で、軽く当てます。だけど、世の中には当身されたことのない人は、何も反応しなかったりします。

それだとまったく崩れないので、当てるしかないのですが、当てていいでしょうか?

横から抱きつかれたらどう対処するか

体験でももう崩れまくって死に体なのに、柔軟性と筋力で耐えて、得意になっている人がいたりします。受け身がとれるのかどうか分からないのでバンと倒すわけにもいかず、困ってしまった経験があります。本当に、やっかいです。




塩田剛三先生はとても怒っていたという話


かなり有名だと思いますが、塩田剛三先生がテレビに出演し、坂東英二さんに技をかけた映像があります。


5分ぐらいのところからですが、塩田剛三先生の演武の映像を見て、「すごいものだけど、受けが上手だからじゃないか」と疑問を投げかける坂東さん。それに反応して塩田剛三先生が、なにかの技を掛けようとする。という流れです。



実はこのとき、決めごとがあったといいます。


手を出してきた塩田剛三先生の腕を板東英二さんが掴み、それをニヶ条か何かの技で極め、まいったとなるような流れだったようです。

ところが胸を掴まれたので、反射的に当身を入れた塩田剛三先生。塩田剛三先生にとっては特別なことではなく、考えるまでもない武道家としての反応だったと思います。



でもこれが、いまの時代なら、どうなるでしょうか。

これが放送された時代でも、塩田剛三先生じゃなければどう評価されていたか。いまなら、スタジオはドン引き。やった人は、暴力的でシャレの分からない人だとなるかもしれません。

評価するのは、武道をやっている人たちの一部だけとか。



後日、塩田剛三先生は「あいつは失礼なやつだ」と、とてもお怒りだったそうです。

腕を掴むはずが、胸を掴んできた。それがただの間違いだったのか、狙いでやったのか。

板東英二さんは元プロ野球選手で、引退後タレント業に。どうすれば、もっとおいしくなるかのセンスはプロでしょう。




ところで護身術は“方法”なのか


そもそも論ですが、「合気道を教える」とは、受け身はこうで、一ヶ条はこうで、四方投げはこうでと、技となる動きのカタチを見せて、それをなぞって繰り返して習得してもらいます。

でもカタチができたからといって、技ができるとはいえません。一ヶ条なら、相手の腕を抑えて動けなくすることで、技ができたとなります。


護身術の稽古風景

護身術はどうでしょうか。自分がやっかいな状況、危機的な状況から怪我なく抜け出すことが目的です。よく世の中では、こうやってこうやって対処すると説明しますが、それで護身術になるでしょうか?


同じ状況なんて、あるわけがないのです。異なる状況に臨機応変に対応できないと、危機的な状況から脱出することはできないでしょう。技の稽古は、定められた手順に沿って、反復練習することが前提になります。


でも護身として考えれば、繰り返しではなく、必要なのは対応力です。

普段の稽古で養った体捌きや崩しの方法などを総動員しながら、状況に対応していく感性を発揮することだと言えるかもしれません。少なくとも、よくある“護身術の方法”を学んでも、ほぼ意味がないことは間違いありません。





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